涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜

海賊アレスがこの国に戻ってきて一ヶ月後、テレサは一ヶ月ぶりに休みを取った。否、上司から休むように言われたのだ。今日から二週間ほどは非番となる。

「……やることもない……」

趣味のないテレサの家は、必要最低限の家具しか置かれていない。家にいても何もないのだ。仕方なく着替え、街をブラブラ歩く。

通りには多くの人が行き交っていた。家庭の用事や仕事など、様々な理由で人々は歩いている。テレサは何も考えないようにして歩いていた。

道端には、多くの出店が並んでいる。売られているコーヒーのいい匂いにつられ、テレサはコーヒーを買った。強い苦味と深いコクが味わえるマンデリンだ。

「失恋した日にぴったり……」

そんなことをポツリと呟き、道端に移動してテレサはコーヒーを飲み続ける。訓練で食べることや飲むことをずっと忘れていたためか、コーヒーが染みるほどおいしく感じた。

「えっ！？どういうことですか？」

どこかで聞いたことのある声に、テレサは顔を上げる。果物屋の前でハナダの着物を着た女性と幼い娘の姿があった。カヤとレイアだ。