涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
会いたくない人物の姿に、テレサは顔を背ける。ズキズキとあの日のことを思い出しては胸が痛んだ。

「うるせえ!俺が二百ピースって言ったら二百ピースなんだ!!」

「し、しかし……主人はリンゴは八十ピースで買えると……」

どうやら、果物屋の店主がぼったくりをしようとしているらしい。チラリとテレサがカヤの方を見ると、カヤは戸惑っていた。レイアは泣きそうになっている。

「払えねえって言うなら、ちょっと来てもらうか」

「や、やめてください!!」

店主はカヤの手を掴み、どこかへ連れて行こうとしている。危険な香りがする。レイアは泣き叫び、多くの通行人がカヤを見たが、助けようとする気配はない。

テレサは、どうすべきか一瞬迷った。相手はセダを奪った。自分にとって敵と言ってもいい存在だ。しかしーーー。

「その手を放しなさい。私は海軍兵士です。ぼったくりは懲役一年または千ピース以下の罰金です。このまま署まで連行してもよろしいですか?」

海軍としての正義の方が上だった。店主は「もういい!」と逆ギレしてどこかへ立ち去っていく。
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