涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
「あの……ありがとうございます。セダさんの幼なじみの方、ですよね?」

カヤは涙を目に浮かべ、ペコリと頭を下げる。レイアも「お母様!」と泣きながらもテレサに頭を下げる。とても礼儀正しい、とテレサは驚いた。この国にこれほど礼儀正しい人がどれほどいるだろう。

「……何もされていませんか?お怪我などは?」

「大丈夫です。かなり驚きましたが……」

カヤは、セダや船員たちにアップルパイを作るつもりだったらしい。しかしリンゴの数が足りずに買いに来たところ、さっきのような出来事になったそうだ。

「こんなところに来ていいんですか?お腹に……」

テレサがそう言うと、カヤは「大丈夫です」と微笑む。どうやらつわりなども酷くないようだ。少し散歩をして太陽の光に浴びた方がいいらしい。

「あの、よろしければ船に来ませんか?お礼をしたいので……」

テレサは断ろうとしたのだが、カヤの純粋な瞳に負け、海賊アレスの船に行くことになった。
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