涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
「安心しろ、もうお前を帰す気はない。お前は俺のものだ。俺の子どもを産んでもらうし、俺の相手を俺が満足するまでしてもらう」

グレンの舌がテレサの胸の上を這う。テレサは悲鳴を上げた。そして、このまま攫われてしまうのかと体を震わせる。


荒波に溺れ沈み
世界が暗闇に染まっても
まだこの手は離さないから


綺麗な歌声がテレサの耳に響く。先ほどまで恐怖で染まっていた心がだんだんと落ち着いてくる。しかし、グレンは顔を真っ青にしていた。

「まさか……」

船長室の窓をグレンが見る。テレサも窓の外を見て、驚いた。

海賊フェニキスの船の前で、カヤが歌っている。その周りを青白い光が煌めいていた。その光景にテレサは心を奪われていく。

「……俺の大切な幼なじみを返してもらおうか」

ガチャリと船長室の扉が開き、銃を手にしたセダが姿を見せる。その後にアイザック、ゴドフリー、ライリーも続いた。

「船の中で戦いたくはないだろ?船に穴が空くぞ?」
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