涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
「お世話になりました」

三人はそう微笑み、船の中へと入っていく。テレサは次にカヤとレイア、そしてカヤの腕の中に抱っこされたアオを見つめた。

「セダとこれからも幸せになってください。レイアちゃん、アオくん、元気でね」

「色々と、ありがとうございました」

「バイバ〜イ!!」

カヤはペコリと頭を下げ、レイアは手を振って船の中へと入っていく。テレサはセダを見つめた。

「次は、いつ帰ってくるの?」

「……わからない。俺たち海賊には計画なんてない。気ままに旅をする」

予想していた返事に、テレサは「そっか」とうつむく。悲しみがあふれてきた。

「ちゃんと帰ってきてね。私、待ってるから」

テレサに、セダは微笑む。それはテレサのよく知る微笑みだった。

「ありがとう」

海賊アレスの船は、ゆっくりと港を離れていく。遥か遠くを目指し、海と大陸を巡っていくのだ。

船を見ていたテレサの瞳から、次々と涙があふれてくる。結局最後までテレサが想いを伝えることはなかった。でも、これでよかったのだ。セダの幸せを壊したくない。

「帰ってきてよ〜!!」

もう遠くなってしまった船に向かって、テレサは叫ぶ。そして、心の中でセダに呟くのだ。

さよなら、大好きだったよ。幸せになってね。
< 21 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop