雨のリフレイン
ベタ褒めされて、柊子がはにかむ。
お世辞でも、褒められれば嬉しい。


「ホテルストリークは、一条グループだからね。
信子さんがウェディングフォトを撮れる場所を探していたから、ここをお勧めしたんだ。
何かと融通が利くし。
上手く写真撮れたか、気になって様子を見に来たんだ。ちょうど、洸平に相談したいこともあったしね。

そしたらさ、ホテルの方で、ちょうど中庭がリニューアルしてそのPR用の見本写真が欲しいって言うからさぁ。
今日は天気もいいし。よろしくな。
あ、俺も友人として一緒に写るから。慌ててスーツに着替えたよ。
写真撮り終わったら、今日の記念にホテル最上階のレストランで食事をご馳走するよ」


「そうだったのね、ステキ!
私たちだけの記念のつもりだったのに、たくさんの人に見てもらえるなんて!
しかも、最上階のレストランで食事…憧れてたのよ。嬉しいわ。
最高よ、翔太先生に相談して大正解だったわ!ありがとう!」


母は、もう嬉しさの極致。
喜びを爆発させて翔太の手を握りしめていた。


由緒正しい名家としても名高い“一条家”は、巨大なグループを率いる一族。翔太は親たちが引退すれば、必然と次世代を担う一員になるはずだ。
こんな時、彼の持つその力の大きさを実感する。


「さては、謀ったな、翔太。
そう都合よく中庭のリニューアルの時期とが重なるもんか。
これ、ハナっから仕組んでたんだろ?
まぁ、天気まで味方につけて。流石だよ」


呆れたように水上が言った。
どうも、図星のようだ。翔太は、いたずらが見つかった子供のようにとぼけた顔をする。


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