雨のリフレイン
先に口を開いた洸平の言葉は、思いもかけないものだった。

「俺は所詮、契約の上に成り立っている擬似家族。
信頼のない関係では、いくら契約でも家族とは言えない」


違う。信じていないわけじゃなくて、安心が欲しいのだ。漠然とした不安をかき消す為にも、洸平の気持ちをはっきりと知りたいのだ。
そう弁解しようとするが、洸平の冷たく怒りを孕んだ声に言葉がすぐに出てこない。

「いえ、そんなことは…」
「よく、わかった。
いいよ、柊子がそうしたいなら。期限をつけてもいいし、今すぐ籍を抜いてもいい。
慰謝料として当面の信子さんの治療費に充てられるくらいの金も用意するし」


洸平は、感情の読めない無表情。それが、静かに彼が怒っている時の顔だと、柊子は知っている。
慌てて弁明しようとしたが、聞くつもりもないと言わんばかりに、洸平が立ち上がった。


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