雨のリフレイン
「俺、出来るだけ早く横浜に行くから。
東京と往復する時間ももったいないくらい今、忙しいし」

洸平は忙しい。それは、充分にわかっている。
でも、こうして柊子の為に時間を作ってくれた。それだけで特別な存在だと思ってしまったのは間違いなのだろうか。
不意に柊子の胸に冷たいものが湧き上がる。


「私の卒業の為に、お忙しい中無理して時間を作って下さって…すみません。
あの、でも…私」
「俺の分のデザートもどうぞ。
俺は気分が優れないから帰る。君はゆっくりしていけばいい」


そう言って、洸平は行ってしまった。
柊子に弁明の機会も与えてくれなかった。そんな余裕もないほどに怒っていた。これほどまで彼が怒るとは思ってもいなかった柊子は、どうしたらいいかわからない。









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