雨のリフレイン
喜びと期待に満ちた桜木の笑顔がまぶしい。その輝きが押し殺していた柊子の不安を呼び起こす。


「親子の時間。
…たとえ、望んで父親になったわけではなくても、子供を愛せるもの、なんですか」
「…どうした?
柊子さんらしくねぇ質問だな」


人の心の底まで見通せるような、鋭い桜木の視線が柊子を射る。
つい、心の奥にしまっていた悩みが口をついて出てしまった。


「あはは。本当ですね。私ったら何を言ってるのかしら」


慌てて誤魔化した柊子の手を、桜木がぎゅっと掴んだ。

「相手は何処のどいつだ。水上とかいう医師か?まさか、翔太じゃねぇよな?」
「さ、桜木さん?」

桜木の迫力に、柊子は初めて彼がやっぱりヤクザなのだと感じた。

「無責任な相手ならオレが…」
「あ、いえ!大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます」

桜木相手に隠し事はできない。
裏の世界で生き抜く彼は、人の持つ闇や弱味を見抜く天才だ。

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