雨のリフレイン
リビングの写真立てに目をやる。ウェディングフォトでの柊子と信子の笑顔が、まぶしい。
だが、その隣の卒業式の写真。柊子の笑顔にはわずかな陰りがあった。おそらくはこれからの事を考えて不安になっていたのだろう。
彼女を支えるつもりで結婚したはずなのに、支えるどころか追い打ちをかけるように苦しめてしまった。

不安ばかり募る。洸平は目の前の固定電話の受話器をとった。再生を止めて、鈴枝の件でお世話になった弁護士に電話をかける。ボタンを押す指が震えていた。

電話は一瞬繋がったが、すぐに切られた。
電話を取り損ねたのかとリダイヤルボタンを押そうとした時、携帯電話にメッセージが届いた。

『こちらの電話に番号が通知されたが、水上君、今、自宅マンションか?
その部屋は盗聴されている。しかも、監視されている。むやみに声を出すな』

「…!」
やっぱり。既に鈴枝の魔の手が伸びていたのだ。

『連絡が遅くなってすまない。
奥さまとお義母さまは無事だ。今は安全な場所にいる。君は心配せずに今日のところはそのまま帰るんだ』

鈴枝のことだ。何をしでかすかわからない。柊子達を追い詰めて、犯罪スレスレのことだってやりかねない。
ここは弁護士のいう通りにするのが一番だ。


洸平は、仕方なくマンションを後にする。







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