雨のリフレイン

「ねぇ、翔太先生、彼女と別れたみたいだよ。
柊子、知ってた？」
「え、また？」

愛美の情報収集力の高さ。
恐るべきスピード。そして、正確性。
いつも驚かされる。


「まぁ、しょうがないよね。翔太先生忙しいもん」
「私なら、寂しいとかワガママ言わないのになぁ。
無事に看護師になれるまでは、付き合う許容範囲に入れないって言われちゃったし。
柊子は、若さも大事だと思わない？」
「…うん」


柊子は、目の前のレポートを書くのに必死で愛美の問いには適当な相槌をうつしか出来ない。


「柊子は、いいよねー。翔太先生と仲良いもん。
ね、今度ご飯に誘ってよ」
「仲良い？
あれは、動物を可愛がるのと同じだから。
からかって遊ばれてるだけだし。
はぁ、やっと終わった！」


一条翔太は、現在、柊子達が通う大学の付属病院に勤務している。
恋の噂には事欠かないが、長続きした試しがない。
彼は、一見チャラそうに見えるが、医師という仕事に真摯に向き合い、プライベートより仕事最優先。
彼女より患者を選ぶタイプだ。
柊子のことは高校生の時から知ってることもあり、何かとかまってくる。