雨のリフレイン
水上の姿は、ソファにあった。
風呂上がりの室内着でくつろいだまま、寝落ちしたようだ。

「先生、風邪引きますよ」

水上の体を揺らしてみたが、規則正しい寝息を立てて、深く眠っている。
起こすのは無理だと判断して、仕方なく毛布をかけた。


「…まつ毛、長い」

こんなに近くでまじまじと水上の顔を見たのは初めてだ。

彫の深い目元、高い鼻。

普段なら決してさわれないそれらのパーツにそっと触れて見る。

「好きよ、先生」

もう、何度告げたかわからない。
だけど、決して届かない想い。

髪からは、柊子が使うシャンプーの香りがする。
同じシャンプーの香りがなんだか嬉しい。
水上との距離が近い気持ちにさせる。

まだ残っている酒の力を借りて、恐る恐る水上の唇に顔を寄せた。

眠っている今なら。

ほんの少し、柊子の唇が触れる。

初めての、キス。


「…!」


酔っている勢いとはいえ、我ながら大胆な行動に柊子は慌てて体を離す。

水上が起きる気配は、ない。ホッとする。


「頭、冷やそ」


真っ赤になった顔を手で仰ぎながら柊子はシャワーを浴びようと浴室に向かった。

その後ろ姿を、水上が見ていたとも気づかずに。



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