雨のリフレイン
「先生、お忙しいのに、車を出して下さってありがとうございました」
「いや。
退院出来たとはいえ、油断するなよ。信子さんはすぐに無理をする。洗濯も掃除も適当で構わないし。料理も、楽しむ範囲でするように伝えて」
「わかりました」
「じゃ」


慌ただしく出て行く水上を見送って、柊子はリビングに戻った。




「柊子。
アンタ達全然、進展してないじゃないの?」

母には、全てお見通しだ。特大のため息をつかれてしまった。

「しょうがないでしょ。私も実習続きで忙しくて」
「もぅ。そんなことだから、変な噂が立つのよ」
「変な噂?」
「そう。入院患者の中では有名だったわ。
内科の三浦先生が洸平くんを狙ってるって」
「三浦先生?」

名前を聞いてもピンと来ない。

「確かに、何かと理由つけて洸平君の周りウロウロしてたわ。
気をつけなさいよ、柊子。忙しいのは分かるけど、時間見つけてなるべく一緒に居なさい。アンタが三浦先生に勝てるのは、若さくらいなんだから」

若さでしか勝てないような相手。
母の言葉に、なんだか武者震いがする柊子だった。





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