雨のリフレイン
柊子に頬ずりする翔太を引き剥がし、柊子と母、水上と翔太で向かい合わせにソファに座った。


「洸平は、あの地獄のような修羅場をどうやってこなしたんだよ?」
「とにかく、毎日、目の前の患者に全力を尽くす。それだけ」
「それだけ?
毎日、燃え尽きて、家に帰るのでさえキツイじゃん。頑張っても、また、すぐに重症患者が運び込まれてさ。きりがなくて。
俺、心折れそう」


翔太が特大のため息をつく。


「翔太先生。
大丈夫よ。君なら出来る。度量はあるから、後は慣れよ。まぁ、たまにこうやって気晴らししたらいいわ。洸平君だってそうだったから」
「信子さん…ありがとう」


翔太が吐く弱音を、母と水上はうなづきながら聞く。

そういえば、水上もよく母と話しこんでいた。

母の懐の広さ、偉大さを感じる。話を聞くのも上手で、鼓舞するのもお手の物。

ーー私もお母さんのような看護師になりたい。

漠然と目指す理想像より、目標とする理想像が目の前にいることは、幸せだ。











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