雨のリフレイン
「あ、もうないや」
柊子は空になったお茶のペットボトルを手に、立ち上がる。

「捨ててくる。新しい飲み物買ってくるけど、お母さんは?」
「あ、私ももうないの。麦茶を買ってきて」



柊子は病院内にある、コンビニに向かう。

母の麦茶をまず手にとり、それから自分の飲み物を選ぼうと棚を見ていた。


「ちょっと」

不意に、声をかけられた。
少々、イラつきを含んだ声。
何ごとかと声の主を確認すると、そこに険しい表情の三浦医師がいた。

「あ、すみません。邪魔ですか?」

外来で診察しているはずの彼女の姿に戸惑いつつ、柊子は棚からスッと体を離す。


「あなた、八坂さん?」

いきなり名前で声をかけられた。
ビックリして固まってしまう。

「違う?看護学生の八坂さんじゃ、ない?」
「あ、そうです。八坂ですが…」
「やっぱり、そうよね。
さっき、外来で名前呼ばれているのを見て。
あなたに話があるのよ、来て」

強引な行動に、柊子は首を傾げつつ、とりあえずレジを済ませて、三浦の後を追う。

すると、ひと気の無い廊下で三浦は足を止めて、くるり、と柊子と向かい合った。

「単刀直入に言うわ。少し、調べさせてもらったの。
水上先生の隣に親子で住んでいて、先生の身の回りのこと、色々と世話しているみたいね」
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