恋叶うオフィス
里香はクッションを抱えてウジウジする私の前に、仁王立ちした。かわいいのに、こういう時は迫力がある里香に怯えて、クッションから顔半分を出す。

それから、首を横に何度も振った。


「しっかりなんて、出来ない。無理……」


目に涙が溜まっていき、またクッションに顔を埋める。瞬きしたら、こぼれそうだ。頭上から呆れるため息が落とされる。


「武藤くんは彼女がいるくせに、他の女にキスするような最低なヤツなのね」

「えっ……、ううん。武藤はいいヤツだよ」


私はガバッと顔をあげて、否定した。武藤のことをよく知りもしないで、最低と言ってほしくない。

武藤のことは私が一番よく分かって……ううん、私ではない、あのかわいい彼女が一番よく分かっている……。

またかわいく笑うあの彼女が脳裏に浮かび、ガックリとこうべを垂れた。

うんざりする里香と話しても一向に良い解決策は出てこないし、気分も上がらない。落ち込むばかりだ。何度目か分からないため息をまたつく。


「帰るね……」


立って、クッションを里香に渡す。
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