恋叶うオフィス
私たちはレストランの窓際の席に案内された。梅雨空なので素敵な景色は半減されるけれど、好きな人と過ごせる休日に私の心は高揚していた。


「えっ? シャンパン?」

「ごめん、武藤。私が注文したの。今日は休みだから、いいでしょ?」

「そうか。ありがとう!」

「ううん。……誕生日おめでとう」


テーブルにはカトラリーやナプキンの他にシャンパングラスもセッティングされていた。武藤はミネラルウォーターが注がれると思っていたらしい。

武藤から予約したと連絡をもらったあと、私がレストランに電話をしてシャンパンを依頼した。ちょっとしたサプライズのつもりで。

グラスを軽く持ち上げて、乾杯した。ひと口飲んでから、顔を見合わせる。


「武藤もとうとう20代最後の年になったね。なにか豊富とかある?」

「豊富? そんなの考えていないな。まあ、これからも穏やかに過ごせればいいとは思うけど」

「武藤って、あまり欲がないよね? 課長にもなりたくてなっていないし。でも、周りは武藤を信頼していて、期待もしてるよね」

「欲か……そうだね。あまりあれこれ欲しいと人に言うことはないかな」
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