恋叶うオフィス
気になってはもちろんいるとは言えず、間抜けな顔をする。


「香水を贈る意味には、親密になりたいという意味があるんですよ。で、その香水をつけるというのは、もらった人と親密になりたいという答えになります。だから、そのあげた女性と武藤課長は両想いなんですよ」

「は? いや、そんな深い意味はないだろうし、そんな勝手に断言してはいけないよ。武藤とその人が両想いなんて……あり得ない……」


最後のあり得ないを百々子ちゃんは聞き取れなかったらしく、聞き返してきたが、もう一度言うことはしなかった。

あり得ないは、自分に言い聞かせたひと言だから。

百々子ちゃんの言ったことを真に受けて、喜んではいけない。武藤が私を好きだなんて、あり得ない。

武藤にそんな気持ちは一ミリもない。だから、私は三年も片想いをしているのだ。

ひそかに、ひそかに、気付かれないように想っている。今の関係を壊さないようにと……。
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