恋叶うオフィス
先月の私と同じような質問をされていて、私は心中穏やかでいられなくなった。こっそり自分のデスクに戻り、武藤の返答に聞き耳を立てた。


「女の人からだけど」

「うわー! それって、それって!」


私も心の中で『うわー』となっていた。みんなと違う意味でだけど。

多くの過剰に反応する声で部内がざわめいていると、武藤を部長が呼んだ。

部長の声で静かになる。武藤は部長のもとへ、武藤に群がっていた人たちはそれぞれデスクへと散る。

私は、ほっと肩の力を抜いた。どうなるかと思ったが、追及が途切れて良かった。

百々子ちゃんがツンツンと私の腕をつついて、小声で話す。


「渡瀬さん、聞いてました? 女性からもらうなんて意味深ですよね」

「そう?」


意味深……私のネックレスのときも同じことを言われた。なんでもかんでも恋愛にと結びつけるのはどうかと思ってしまう。

私のとぼけた返事に百々子ちゃんは鼻息を荒くした。


「もう、渡瀬さんったら。どうしてそんな無関心でいられるんですか? 同期の武藤課長が気にならないんですか?」

「へ?」
< 43 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop