恋叶うオフィス
その週末の夕方、インターホンが鳴った。私の部屋になんの連絡もなしに訪ねて来るのは、里香か勧誘くらいだ。

そのどちらかだろうとモニターに映っている人物を確認する。


「えっ、武藤……。はい?」

「渡瀬? 例のケーキ店のケーキ買ってきたよ」

「あの行列店のケーキ? あ、今開けるね」


玄関を開けると、白いケーキ箱を持って、にっこりと笑う武藤がいた。私の好きな笑顔で見ないで……。ときめく心を抑えて、緩みそうになった顔を引き締めた。

武藤が「はい」と箱を差し出す。


「ありがとう」

「俺の分も入ってるから、一緒に食べていい?」

「あ、うん……。どうぞ、あがって」


武藤が入れるようにと、後ろに下がったとき、外から「柚希」と私を呼ぶ声が聞こえた。武藤が歩みを止めて、振り向く。私も玄関の外へと顔を出した。

声でそこにいる人物はわかったけれど。


「びっくりした。武藤くんがここにいるなんて。遊びに来たの?」

「ああ、うん、まあ……」


武藤は里香に返事をしながら、私を見た。約束していたのではなく、突然来たと言いにくそうにしている。
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