曼珠沙華が遺した言葉
監察医と彼岸花
とある町にある小さな法医学研究所。そこで働く監察医の彼女――浅瀬 悠梨(あさせ ゆうり)は、一人の男性を見つめ、ゆっくりと口を開く。

「新藤(しんどう)刑事、解剖結果ですが――」

時は遡ること数時間前、いつも通り悠梨たちが過ごしていると、新藤刑事がこの法医学研究所に飛び込んできた。

新藤刑事は悠梨たちに、とある女性を解剖してほしい、と依頼してきたのだ。

その女性――松井 芽依(まつい めい)が倒れていたのを、芽依の旦那――松井 紫安(しあん)が仕事から帰って来た時に発見された。

「胃の中から、とある物が出てきました。それが、これです」

そう言って、悠梨は一枚の写真を見せる。何かの植物の根っこのようなものが写った写真。

「これは……?」

新藤刑事が首を傾げると、悠梨と同じ法医学研究所で働く楪 颯介(ゆずりは そうすけ)が口を開く。

「新藤刑事からいただいた写真と合わせてみたところ、一致しました。恐らく――」

新藤刑事が颯介に渡したという2枚の写真には、芽依の手に握られている数本の彼岸花と、丸い球根みたいなのが付いた根っこが写っていた。

「まだ検査結果が出ていないので、定かではありませんが、彼岸花の根っこでしょう」

「……彼岸花って、有毒植物だったっけ……何が検出されたら――」

「アルカロイドだ」
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