華麗なる人生に暗雲はつきもの
「そういうのも時代の流れなのかもしれない。だがね、繰り返すが私は順序というものがあってしかるべきだと思うんだ。俊君、私の考え方はやっぱり古臭いかね?」
「いいえ。俺も順序というものは大事だと思います。おじさんの考え方に賛同します」
二度目の名前呼びに、俺は即答だった。
つまりは、できちゃった婚はするなということ。
つまりは、俺と水野の結婚を認めたということだ。
つまりは、俺のマイナスイオンに満ちた生活へ立ちふさがるハードルを突破したということだ。
「そうか。やっぱりそう思っているか。あくまで、世間一般の話だがね」
おじさんは、ほっとしたのか表情を和らげる。
「ええ。わかっています。世間一般の話ですね」
俺はテーブルの下で手に拳を握りながら大きく相槌を打つ。
「そうだとも。これもあくまでも世間一般の話だが、結婚して親と疎遠になる子もいるそうじゃないか。そんなことは……」
「ええ。まったくもって、おじさんの言う通り。あくまで世間一般の話ですけどね……」
「これもあくまでも世間一般の話だが、釣った魚には餌をやらないだとか……」
「ええ。まったくもって、おじさんの言う通り。あくまで世間一般の話ですけどね……」
こうして、午前になるまで二人で世間一般の、水野との結婚におじさんが求めるものの話は続いた。