華麗なる人生に暗雲はつきもの



「お前な女の子に八つ当たりなんて最低だぞ」



 目を向けずに麺をすする。


 噛むことさえ面倒くさい。



「本当のことを言ったまでです。それに高杉さん、俺が知らないとでも思ってるんですか?」



 俺が睨み付けると、高杉さんは目を泳がせた。



「な、何だ?」



「俺に触れると女運がなくなる、って言う噂流したの高杉さんですよね?」



 エレベータで俺に近づくのを必死に拒否している若い男どもが最近、数多く見受けられる。


 触れて俺のこの運のなさが憑依するなら、俺は男にでも抱きつくことだろう。


 一瞬、きょとんとした高杉さんだったが、次の瞬間豪快に笑いだした。



「違う。お前みたいな女に苦労しないやつが、女に振られて死にそうな顔してんだ。榊田は呪われてる、って思うやつがいても不思議はない」



「くだらない」



「そう言うな。噂されるのは色男の宿命さ。お前は目立ち過ぎる。それに悪いことばかりじゃないだろ?」



「ここ数か月、生き地獄しか味わってませんけど」



 結婚を決めた瞬間から何もかもが空回りする。



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