華麗なる人生に暗雲はつきもの

「当然でしょ。お義姉さんになって欲しいなんて小春ちゃんに口が裂けても言えないよ。犯罪者の兄なんて最悪。それに私、お母さんに言っちゃった。お兄ちゃんが結婚するって」



「……………………」



「お前が実家に小春を連れて行くことを嫌がっていたから、小春に会えることを本当に楽しみにしていたぞ」



「そうそう。お母さんはあからさまにウキウキだし、お父さんもそんな奇特な女性がいるとは思えん、とか言いながらも、どうなった？って聞いてくるし。でも、結局破局。すごくがっかりするだろうな」



「……………………」



「私がしっかりと伝えておいたから安心しろ、俊。傷心のお前に電話をしてくれるなと」



「えっ！？言っちゃったの！？お父さんのそれ見たことか、って言う顔が思い浮かぶわ。本当に破局なんてね。当然なんだけど。小春ちゃんにお義姉ちゃんになって欲しかったのに、通り魔なお兄ちゃんのせいで」



「……………………」











　ここに来たのが間違いだったのだろうか。


　俺はマゾではない。


　傷に塩を塗り込まれて喜ぶ男ではない。


　ズタボロにされることを覚悟して魔窟に来たのは、現状をしっかり確認し、水野との関係を一ミリでも良い方向にと思ったからだ。