華麗なる人生に暗雲はつきもの
階段を上りきったと同時に自分の部屋の前に蹲る人影が見える。
カチカチと買替え時期をとっくに過ぎたライトが照らすのは大量の紙袋。
そして、プリーツのロングスカート……白だろうか。
見覚えがある姿に俺はそっと声を掛ける。
「……水野?」
夢か幻ならば消えないでくれと思う。
蹲った人影が膝から顔を上げた。
「榊田君!!!」
やっぱり水野だ。
驚き立ち尽くす俺をよそに、水野はまた顔を膝に埋めた。
そして。
わ~!!!!!
と大声で泣き出す。
突然の出来事の連続でど肝を抜かれ、どもりながら問う。
「お、お、おい。どうした!?」
「こ、こ、こっちのセリフよ!!どうしてこんなに帰りが遅いのよぉ!?チャイム鳴らしても出て来なくて。金曜日は早く帰えって来るのにぃ~~」
「……あ?……あ、……あ?」
突然の出来事に俺は壊れたおもちゃでももう少しマシな反応しか返せない。
そんなことも気にせず、というか気に掛ける余裕がない水野は捲し立てる。