華麗なる人生に暗雲はつきもの

　好きかどうかわからなくなった。


　愛のない結婚。


　鮮明に黒い波紋がゆっくり広まるように、水野の言葉がよみがえる。


　水野は俺を身代りにしていただけだったのだ。


　仁の身代りに。


　それに気付いて、本当は仁を愛していると気付いて、それで別れたいと言ったわけだ。


　世迷言は、この三年間俺へと囁き続けた、大好きのほうだったわけか。


　溺れさせたのは水野なのに。


　惚れたのは俺だけど、溺れても構わないと、水野に入れ込んで構わないと、大好きと囁き続けて、俺を溺れさせたのは水野なのに。


　今さら、好きではなかった。


　そんな理由で、終わりにするつもりか。


　水野が俺を好きかだなんてどうでもいい。


　俺は水野が好きだから。


　こんな最低な女、殺してやりたいと心底憎んでいても、愛しているから。


　どうしても、嫌いになれなくて。


　どうしても、愛さずにはいられないから。


　どんな形でも水野がいなければ俺はダメになってしまう。


　こんな女でも、どうしようもなく愛してる。