華麗なる人生に暗雲はつきもの
片手で口を塞ぎながら、もう一方の手をスカートの中に忍ばせると抵抗が一層強まり、その瞳から涙が零れ落ちた。
恐怖からの涙でも、俺に向けられた涙が嬉しくて涙へと唇を寄せた。
水野が強いとは言っても、俺には勝てない。
力でねじ伏せるなんてわけない、力づくでものにするなんて簡単だ。
震える身体もその涙も、何もかも自分のものにしたい。
結婚しなければならないような事態に持っていけば良いのだ。
最初から水野を説得するなんてことを考えなければこんなに苦しまなくて済んだのに。
でも、まだ遅くない。
水野の抵抗を封じるために力を強めると、涙が滲む顔をこれどもかというほど恐怖で歪ませた。
下着を脱がそうと手をかけたと同時に、ドアが勢いよく開かれる音と微かな光の正体であった街灯の光が玄関へと差し込んだ。
次の瞬間、後襟を掴まれたかと思うと水野から引きはがされ、振り向き様に拳が顔へと飛んできた。
強烈な痛みの中、何とか顔を上げ体勢を整えようとするが、仁がいると認識したと同時に。
すっと軽やかで素早い蹴りが、俺の脇腹へと入る。
水野が得意とする回転地獄蹴りは仁仕込みだったと思い出す。
その速さも威力も水野とは比べようもなく、その勢いで吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられ引きずられた。
今まで感じたことない、それこそ死んでしまうのではないかという痛みが体中に広がり、脳みそが揺すられる感覚。
しばらく息をすることもできなかった。