華麗なる人生に暗雲はつきもの




 男として仁に負けたくないし、こいつにだけは頭を下げたりしないと。


 いくら水野が好きで好きでたまらなくても、仁に頭を下げることなんてできやしない。


 そんなことをするなら、死んだ方がマシだ。


 惨たらしく死んだ方がずっと良い。


 俺のプライドだ。


 絶対に何があっても譲れないと思っていたプライド。


 水野を失う。


 それは死よりも耐え難い。


 水野だけは失うことはできない。


 それでもプライドは捨てられないと思っていたけど、現実になった今、俺は。


 酒を一口飲む。


 焼け付くような喉の痛みに、コップを持つ手が震えた。













「頼む。水野に俺と結婚するように言ってくれ」



「はぁ!?」



「俊君!?」



 最後まで保ちたかったプライドを捨て、情けなくて涙が零れ落ちそうになる。


 情けなくて、情けなくて、自分を殺してしまいたくなるほど、情けなくて、許せない。


 でも、水野が好きで、どうしようもなく愛していて。


 仁に頭を下げて、命乞いなどするなら迷わず死を選ぶ。


 それでも、水野を失うならば俺は仁の前で這いつくばるのだ。




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