一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「さすがお義母さま。見事な撃退でしたわ」

「本当だね。千香子さん。やはり君は頼りになる僕のハニーだよ」

「母さんのお陰でうるさい蝿を追い払うことができた。ありがとう」

パチパチパチパチ・・・・!

千香子をスルーしてはいけないと、この短時間で悟った設計課の社員は優秀だ。

矢継ぎ早に言葉を重ねた萌音も、風太郎も海音も日頃の行動の賜物と言えるだろう。

「どうだった?萌音ちゃん?私もキムヘスク様位にはなれたかしら」

キャピキャピと喜ぶ千香子をスルーしなくて良かったと、一同は安堵のため息をついた。

一方で

「つわりがきつくて黙って傍観してたけど、あいつ全妊婦を敵にする言動だったわね。お母さんの好きな韓流ドラマも真っ青な傲慢ぶりで言葉もなかったわ」

自分のデスクで座り込んで傍観していた桜がボソリと呟いた。

「桜さん、大丈夫ですか?」

「私より萌音ちゃんよ。ひどいこと言われて調子を崩してない?」

悪阻のなかった萌音は、その点に関しては桜に共感してあげることはできない。

自分もきついのに萌音を思いやる桜に、萌音は心をあたたかくした。

「大丈夫ですよ。これから検診に行ってきますね。何かあったら連絡します。桜さんも無理しないように」


< 63 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop