一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「萌音、俺も一緒に行こうか?」

「何言ってるの。鈴・・・、さっきの人がいなくなって大変でしょ?早く取引先に行かないと」

エレベーターの前まで見送りに来てくれた海音の心配性に、萌音は笑って言った。

千香子はすでに車を玄関にまわすべく、すでに駐車場に移動している。

今、エレベーターホールには海音と萌音の二人きり。

正面からはお腹がつかえて抱き締められないので、海音は左側から萌音を抱き寄せた。

「俺のこと疑った?あんな奴、佐和田並みに冷たくあしらってたんだけど」

浮気を疑われたと思ったのだろうか?

海音にとっての三角絞め佐和田はかなりのトラウマらしい。

「そうだね。妻が妊娠中は夫が浮気しやすいっていうもんね」

あくまでも一般論のつもりで萌音は言ったのだが、海音は本気にしたようだ。

「8年も萌音を待ってたんだぞ?今さら他の女に走るかよ」

と、ムキになって言い返してきた。

「あら、私が妊娠するまでは、あんなに毎日肉食系男子として求めて来てたじゃない?あまり説得力がないわ」

萌音は肩をすくめて上目遣いで海音を見つめた。

海音は目を見開いて驚きを見せたが、すぐに萌音の手を取ると、空いている近くの会議室に萌音を連れ込んだ。
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