彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
◆不利上等!探せ!救え!守れ!倒せ、『GREAT STAGE』!!◆
お姉と住んでいるマンションの近くまで帰ってきた時だった。
道の前方、歩道に寄せて止まっている車から人が降りてきた。私にとっては背景の景色が変わるぐらいで気にしない。
「鳴海瑠華さんですよね?」
「え?」
でも、今日だけは違った。
知らない男に声をかけられた。
「速水亜都子さんの先輩の鳴海瑠華さんですね?」
身ぎれいな男だったが、普通じゃないニオイがした。
「・・・だれ?」
あっちゃんの名前が出た時、嫌な予感がした。
私の問いかけに、相手は背を向けて、近くに止まっていた車に向かう。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
慌てて追いかければ、後部座席がスライドしながら開く。
そこにいたのは、体を縛られ、口を布で閉ざされ、視界を奪われている少女がいた。
「あっちゃん!?」
目隠しをされていてもわかった。
私が一番、唯一可愛がっていた後輩だった。
「あっちゃん!!」
名前を呼んだが反応はない。
ぐったりとしており、スケベな顔をした男二人に抱えられていた。
「あっちゃん!!!」
助けようと駆け寄れば、後部座席のドアが閉まる。
変わりに運転席の窓が開く。
「乗りますよね、鳴海瑠華さん。」
さっきの男だ。
ひどく落ち着きのある態度が、気味悪かった。
「乗らないと言ったら?」
ありえないことを聞けば、さわやかな笑顔で男は言った。
「彼女1人で、男性達の接客をしていただくだけです。また神城龍志にダメージがいきますね。」
「!?」
その言葉で、過去の忌まわしい記憶がよみがえる。
「同時に、相手が何者であるかもわかった。」
「あなた達、グレイトの仲間ね!?」
「乗るのですか?乗らないのですか?」
「乗るわ!乗るから、言う通りにするから、速水亜都子ちゃんには手を出さないで!」
「あなたの意見はわかりました。詳しい話は車の中でしましょう、ね?」
助手席のドアが開く。
無言で乗り込み、ドアを閉める。
-瑠華さん!-
なぜか脳裏に、凛道蓮の声と姿が浮かぶ。
がらにもなく、涙が出そうになった。