彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
◆不利上等!探せ!救え!守れ!倒せ、『GREAT STAGE』!!◆



お姉と住んでいるマンションの近くまで帰ってきた時だった。

道の前方、歩道に寄せて止まっている車から人が降りてきた。私にとっては背景の景色が変わるぐらいで気にしない。





「鳴海瑠華さんですよね?」

「え?」





でも、今日だけは違った。

知らない男に声をかけられた。





「速水亜都子さんの先輩の鳴海瑠華さんですね?」





身ぎれいな男だったが、普通じゃないニオイがした。




「・・・だれ?」




あっちゃんの名前が出た時、嫌な予感がした。

私の問いかけに、相手は背を向けて、近くに止まっていた車に向かう。




「ちょっと、待ちなさいよ!」




慌てて追いかければ、後部座席がスライドしながら開く。

そこにいたのは、体を縛られ、口を布で閉ざされ、視界を奪われている少女がいた。





「あっちゃん!?」





目隠しをされていてもわかった。

私が一番、唯一可愛がっていた後輩だった。





「あっちゃん!!」





名前を呼んだが反応はない。

ぐったりとしており、スケベな顔をした男二人に抱えられていた。





「あっちゃん!!!」





助けようと駆け寄れば、後部座席のドアが閉まる。

変わりに運転席の窓が開く。





「乗りますよね、鳴海瑠華さん。」





さっきの男だ。

ひどく落ち着きのある態度が、気味悪かった。





「乗らないと言ったら?」





ありえないことを聞けば、さわやかな笑顔で男は言った。





「彼女1人で、男性達の接客をしていただくだけです。また神城龍志にダメージがいきますね。」

「!?」





その言葉で、過去の忌まわしい記憶がよみがえる。





「同時に、相手が何者であるかもわかった。」

「あなた達、グレイトの仲間ね!?」

「乗るのですか?乗らないのですか?」

「乗るわ!乗るから、言う通りにするから、速水亜都子ちゃんには手を出さないで!」

「あなたの意見はわかりました。詳しい話は車の中でしましょう、ね?」





助手席のドアが開く。

無言で乗り込み、ドアを閉める。





-瑠華さん!-





なぜか脳裏に、凛道蓮の声と姿が浮かぶ。

がらにもなく、涙が出そうになった。






< 835 / 922 >

この作品をシェア

pagetop