先輩の彼女
「谷岡君、ごめんね。私が余計な事したから。」

「いいんです。こんなの、僕なんかしょっちゅうですよ。」

次から次へと本を拾い上げ、段ボールに入れていく様は、本当に手慣れたものだ。


「代わりに、何か奢らせて。」

「えっ?いいんですか?」

パッと明るい表情になった谷岡君は、急に手を止めた。

「うん。ジュースでもアイスでも、お昼でも。なんでもいいよ。」

ほんの軽い気持ちだった。


「だったら僕、久実さんとデートしたいな。」

谷岡君は、笑顔で私を見た。

「デート?」

あまりも突拍子もない事に、これが本気なのか、冗談なのか、私には分からない。

「いいでしょ?今、奢ってくれるって言ったじゃん、久実さん。」

「うん、まあ……」

でも、食事とは言ってないけどな。


「いつ?僕はいつでもいいですよ。」

すごく期待している雰囲気がする。

「ああ……来週には、行けると思うけど。」

「やった!久実さんとデートだ。」
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