私の知らない私の家族
「…は…?」

返ってきた台詞の意味が分からず戸惑う私。そんな私を他所に、お兄ちゃんは続けた。

「俺さぁ、小さい頃から何か疑問に思ったことがあれば何でも自分で試そうとするんだよな。…幼稚園の時カブトムシ飼ってたんだけどさぁ、ふと気になったんだよ。こいつの中身はどうなってるんだろうって。それで俺、台所からこっそり包丁持ち出してそのカブトムシ解剖したんだよ。そしたらそれが面白くて面白くて!俺、まだ5歳のクセしてカブトムシとかヤモリとかを解剖する事にハマっちゃったんだよな。」

ゲラゲラと狂ったように笑うお兄ちゃん。吐き気がこみ上げてきた私はその場に蹲み込んでしまった。

「で、虫とか爬虫類で留まっときゃ良かったのに…俺の好奇心は成長するごとに増していった。小4の時、俺は今度は人を殺してみたいと思った。だからあいつら3人を殺したんだ。なあサユ、3人の殺害方法がバラバラな事、疑問に思わなかったのか?」

私の顔を覗き込むお兄ちゃん。でもその顔は私の知っているお兄ちゃんではなかった。前に何かの本で読んだことがある。自分と瓜二つのもう1人の自分の話…『ドッペルゲンガー』。
これはお兄ちゃんのドッペルゲンガーなんじゃないか?
そう思ってしまうほど、そこにいるお兄ちゃんは狂気的な表情を浮かべていた。
< 52 / 65 >

この作品をシェア

pagetop