私の知らない私の家族
「最初、俺は田崎を家庭科室から持ち出した包丁で刺し殺した。あの時の感触は今でも鮮明に覚えてるよ…詳しく教えてやろうか?」

狂気じみた表情で私の目をじっと見つめるお兄ちゃんから目を逸らし、私は首を横に振った。

「プッ、ノリの悪い妹だな。まあいいや。…でさあ、次の日階段から突き落として殺した石江なんだけど、あれはあんまり面白くなかったな。田崎の時と比べるとスリルが激減した感じ?背中押して逃げただけだし。でもまぁ、あいつのおかげで『人間は簡単に壊れる』ってことが分かったから良い勉強になったのかもな。」

お兄ちゃんの狂気に満ちた笑い声がやけに遠く聞こえたと同時に私の吐気は増し、眩暈にまで襲われた。そんな心身共にボロボロの私に気を使うことなどなく、お兄ちゃん…いや、お兄ちゃんだったその人は語り続ける。

「でもやっぱり突き落とすだけじゃ物足りなかった。俺はもっと人を殺すことに力を注ぎたかったんだよ。だから鷹峯の首を絞めて殺した…。結果、田崎、石江、鷹峯の3人を殺したことで俺は色んな殺人を経験できたって訳だ。欲を言えば殺した人間を解剖してみたかったんだけど…それをやったら情状酌量の余地がねぇからな。ギャハハハハハハッ…」

バシッ
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