氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 たしか図書室には、ひと気がなくて。

 こんな人がいたらまず気づいたと思うんだけど。

「屋上からちょうど見えるんだ。あのあたり」

 そういえば座っていた席が図書室の窓際だったなと思い出す。

「ダメだよー? 校内でするときは。見つからない場所でしなきゃ」

 なにをだよ。

「いいとこ教えてあげようか。それとも。アイツと俺、食べ比べてみる?」
「見られて困るようなことしてませんしする気もありません……!」

 なんなんだ、この人。

「君のこと、そこで聞いちゃった。みんな口を揃えて言ってたよ。学年で一番かわいい女の子だって」
「付き合ってるとかじゃないので。先輩とは他人です」
「いやね。氷河が女の子といるの珍しいから、つい気になってさ。どう。タピオカでも飲みながら親交を深めない?」
「深めません」
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