氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
「当麻と喧嘩でもしたか」
「そうじゃなくて。その……」

 わたしは、自分から友達を作るのが苦手だ。

 藍さんや紗里、桜のように向こうから積極的に絡んでくれたりフットワークの軽めな子だと話しやすい。

 でも、天津さんは――……壁が目に見える。

「あの赤メガネちゃん?」

 どうしてわかっちゃうかな。

「神経質そうな子だな」
「いい子なんです、すごく。真面目で、努力してて。頑張ってる人に寄り添うところもあって……」

 ――“一生懸命な人をからかうのは。あんまりだと思う”

「からかうって……。思わせぶりってなんのことですかね?」
「まったく話が見えないな」
「ですよね! って、すみません。イガラシさんにこんなハナシ……」
「すれ違ってるなら。話し合うとか」
「そう、ですよね」
「どうでもいいと思うなら。最低限の付き合いだけしてれば」
「どうでもいいとは思いません……!」
「まあ。とりあえず」
「とりあえず?」
「金払え」

 レジのお姉さんが、ニコニコしてわたしが支払うのを待っているのを見て気づく。

「……あ」

 お金、足りない。
< 407 / 617 >

この作品をシェア

pagetop