氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 早々に勉強するのを諦めたわたしの隣で、アイツは机に顔を突っ伏す。

 やっぱりもう少し教えてもらえばよかったかな。

 まだ、先生の話よりかは耳を傾けられたし。

「……眠いよね。やっぱり」

 あんなに遅くまで、動き回ってたら。

「どうして来た」
「え?」
「嫌なら、断るだろ。たとえナリさんが多少強引に誘ったとしても」

 顔を伏せたまま話す、当麻氷河。

「……それは」

 イロイロあったから話すと長くなる。

 そういえば結局成澤からコイツのSNSアカウント聞き出せてない。

「ナリさんに本気で口説かれた?」
「は!?」
「あの人、ファン作って客として試合に招くことはしても。個人的な理由で俺らには近づけてこない。むしろ距離をとってる。アイスホッケーが絡むと真面目な人だ」

 そんな風には見えなかったけど。

 練習始まるギリギリまでデートしようとかなんとか。

 終わってもまだチャラけてたし。

「ましてや昨日のアレは色んな高校から――経験あるヤツや初心者を集めていた。中学までで辞めてしまった元チームメイト。練習場や機会が儲けられない新人選手らの交流の場。そんなところに素人の女子を呼んだってことは」
「……なに?」
「特別なワケでもあるんだろう」
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