あなたの隣にいてもいいですか
「りえと何度も別れ話してて、でも、どうしても納得してくれなくて。でも、未来がないのに今の状態をずっと続けてしまうのは良くないことはわかってるのに、だけど離れられないから。会社は辞めるしかない、と思ってた。だけど、会社を辞めただけじゃ、今までみたいに自宅に押しかけてきたりもしかしたら転職した先にも来るかもしれないって思ってさ。物理的にもりえから離れる必要があると思ったんだ。

将来独立したいって目標もあったし、会社は時期が来ればやめることにはなっていたと思うんだ。ただ、もう少し今の会社で経験を積みたいって思っていたから少し残念ではあるんだけど。留学は昔からしたいと思っていたし、いい経験にもなると思ってるから楽しみではあるんだ。

ただ、茉実ちゃんだけ、茉実ちゃんのことだけは、どうしても割り切れなくて。」

「・・・・・」

「好きなんだ。もう、だいぶ、前から。
最近では、いつも茉実ちゃんのこと考えてるし、茉実ちゃんのことで頭がいっぱいで、ずっと茉実ちゃんと一緒にいたいって思ってしまうんだ。金曜日、絢と三人で会った時も、昨日も、茉実ちゃんと離れたくなくて、帰ってほしくなくて、ずっと一緒にいたくて、もう苦しくて・・・
迷ったんだけど、留学前に伝えるかどうか、悩んだんだけど

だけど、無理なんだ。茉実ちゃんのことが好きだよ。」

声が出ない。大雅君の言っていることは本当だろう。りえちゃんと仲良くお料理教室に通っているころから大雅君は私に甘かった。まだその頃は、女友達の中では、一番気が合う、という程度だっただろう。しかし、りえちゃんとこじれて、私が近くにいるようになって・・・

私も同じだ。私も、ずっとりえちゃんが羨ましかった。たけど、大雅君は二股かけたり、そんな人には見えないのに、意外な一面もあって、何となく危険だったしりえちゃんと上手くいっている時期は、自分にブレーキをかけることも案外簡単にできていた。留学の話をりえちゃんから聞いたころからだろうか。自分の気持ちにはっきりと気付いていた。

「・・・茉実ちゃん・・」

私の手を握りながら、私の名前を呼ぶが、私は答えられない。答えていいのかどうかわからない。

「茉実ちゃん」

何か、言わないと。言うまで、この手は離れないだろう。だけど、私だって、嘘はつけない。留学までの残りの時間大雅君との時間を大事にしたい。

「私が、留学のこと知りながら、何も言ってくれない大雅君とどんな気持ちで一緒にいたかわかる?」

「・・・」

「私も、大雅君が好きだよ」

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