闇色のシンデレラ
……ふざけるな。



「敵は西じゃねえ」

西雲(さいうん)の衰退は著しい。ここを叩けば西は崩壊する」

「西を潰してどうする。荒瀬が頭を抱えてるのは『北』だろうが」

「その北があの娘を狙ってんだ。西を潰す最高の餌だとな。
()るか鉄砲玉にするか、使い道はいくらでもある」





親父のいうことは一理ある。


北にとっては壱華は一種の邪魔者であり、格好の餌でもなのだ。


だが。



「……ふざけんな」

「あ?」

「壱華は道具じゃねえって言ってんだよ!」



壱華は、たとえ死別しても誰にも渡さない。


俺の女だ。



「志勇!」

「……ほざけ、ガキが」



司水が止めにかかるが、その手を払いのけ、静かな怒りを眼光ににじませる親父に言い放った。



「あいつだけは使わせねえ!誰にも渡さねえ!
親父もそうだろうが。計画のためならおふくろだって使うのか、あ?違うだろ!」



もし、壱華と離れ離れとなる運命だとしても、俺が変えてやる。


壱華は他の誰のものでもない。


お前が俺の唯一無二だ。
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