闇色のシンデレラ
SIDE 壱華



志勇がいなくなった後、室内はわたしと絋香さんだけになった。


彼女はわたしに優しい目を向け、嬉しそうに微笑んでいる。


わたしの人生で、軽蔑(けいべつ)のない笑みなんて向けられること自体少ないないから、正直戸惑った。



「初めまして。あなたが、壱華ちゃんね?」



すると絋香さんは破壊力絶大な素晴らしい笑顔をわたしに向けた。



「わたしは絋香。冬磨の妻です。どうぞよろしく」



優雅な所作でお辞儀をする彼女に、わたしもあわてて合わせた。



「今日はあなたがここに来ることを、すごく楽しみにしていたの」



本当に楽しそうな彼女に、こっちも釣られて笑ってしまいそう。


でも、あとちょっとのところで口角を上げないのは、心のどこかで笑ってはいけないとブレーキをかけているから。


感情を見せれば弱味をつけこまれると、あの姉妹のせいで笑わないくせがついているみたいだ。


本当はわたしだって笑いたいのに。
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