闇色のシンデレラ
約30分後、マンションに迎えに来てもらい、本家に2度目の訪問した。


敷地内では時々組員の人とすれ違って二度見されるくらいで、他は特に変わりなく静かだった。


案内してくれる剛さんに無言でついていき、見覚えのある中庭に面した長い廊下を歩く。


すると、正面から全身を白い服に包んだ背の高い人が、ずんずんと歩いてきた。




「あ、剛のアニキ。
すいません、あのガキ知りませんか。
またあいつにやられて……おお?」



現れたのは黒いシャツに腰に巻いたエプロンと、板前姿の本家の厨房担当、力さん。


珍しく感情を剥き出しにしていたけど、わたしを見ると目を丸くして立ち止まった。



「……どうも」



頭を下げてきた力さんに、わたしも剛さんの後ろから一礼。




「ん、若はどちらに?」

「若は事務所だ。今日は壱華さんお一人で姐さんに用事があるそうだ」

「姐さんに、ですか。今オヤジといますけど、いいんですかね。
……おっと、さっさとあのガキ探さねえと。それでは」



人探しをしているらしい力さんは短く挨拶してから、辺りを注意深く見回しながら廊下の角を曲がった。



「姐さんは金獅子の間にいらっしゃいます」



力さんを目で追っていると、前方の剛さんが一言。



「金獅子の間?」

「へい、そこは……」



分からない単語をオウム返しして、剛さんが『金獅子の間』について説明しようとしたその時。






「剛〜!」





この場に合わない、子どもの可愛らしい高い声が響き渡った。
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