闇色のシンデレラ
「少々お待ちいただけますでしょうか。
今はオヤジが独り占めしたいらしく……」



司水さんは心の奥底に潜む何かを隠すように、顔に笑みを張りつける。


軽い冗談を言ってみせるのは器用な彼の気遣いなんだろう。



「いえ、こちらこそ急に押しかけてすみません。
紘香さんにお会いさせていただけるだけでも嬉しいです」



それに、わたしの目的は絋香さんだ。彼女に相談があって志勇に内緒で来たのだから、そっちの情報を知ることを率先しよう。



「ではそれまでお部屋でお待ちになりますか。ここで待つのもなんですし」

「大丈夫です。憂雅くんを見てます」



でも、ただ待つよりは誰かと一緒にいる方が色々考えなくて済む。



「憂雅を、ですか」

「はい」



何より、憂雅くんを見ていると癒される。


その場でしばらく見守っていると空が暗くなってことが見て取れた。


どんより灰色に曇った空、一雨来そうだな───と、あちこちに向かう思考から、途切れてしまった話の続きの言葉を探す。



「……憂雅くんは、何歳ですか?」



頭に浮かんだのは、やっぱり憂雅くんの話題。



「4歳です。イタズラ盛りな年頃ですよ」

「4歳かあ、ちっちゃいなぁ。いたずらされても可愛いから憎めませんね」




顔を合わせようとしたけど、司水さんはそこでわざと無表情になった。


それから独り言のように、だけど嫌にはっきりと口にした。









「ええ、可愛いですよ。
たとえ自分の子じゃなくてもね」









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