闇色のシンデレラ
「憂雅、その辺にして剛と遊びなさい」



怒ってたはずの司水さんは和やかな表情になって腕を伸ばしてきたので憂雅くんを預けた。



「え、剛あそんでくれるの!?あそぼー!」

「えぇっ、俺は今から……」

「じゃあおいかけっこね!剛がおっかけて!」



地面に下ろされると剛さんの腕を引っ張って裸足のまま中庭に入る憂雅くん。


剛さんは全く乗り気じゃなかったけど、軒下に放置してあった下駄を見つけてそれを履く。


気だるそうに追いかける剛さんと、楽しそうに逃げる憂雅くん。


平和だな、なんて思って癒された。



「……可愛い」



彼らを見守っていたら、勝手に言葉が出た。


はっとして司水さんを見たら凝視されてきて、目が合うと奥ゆかしげに笑われた。



「そうですね、可愛いだけなら構いませんけど。
最近はイタズラを覚えまして。皆を悩ます問題児にならないかと心配で」

「きっと大丈夫ですよ。司水さんがお父さんですから」



やっぱり、彼はお父さんなんだな。


嬉しくなってそう言ったのに、瞬く間に彼は表情を曇らせ、ふいっと視線を逸らした。



「……今日は姐さんにお会いにいらしたということでしたね」

「あ、はい」



何か、気に(さわ)ることを言ってしまったかな。


わたしよりずっと大人で、世の渡り方を知る彼が不自然に話題変換をするなんて。


こんなとき、他人の顔色をうかがう自分のクセがいいものか悪いものかよく分からなくなる。
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