闇色のシンデレラ
「ずっと探してた。お前は俺たちにとって大事な存在だ」

「放して……」

「追われてるんだろ?俺について来い」



わけが分からない。


この男が誰なのか、こんなボロ雑巾のような女に、何のために甘言を吐くのか。




「守ってやるよ」

「……やめて!」



鬱々(うつうつ)と状況理解に努めていたそのとき、激しい嫌悪感に襲われた。


その言い方が、優しい口調が、理叶と重なったから。



「っ、いや、嫌ぁ!」



再発した拒絶反応。


わたしは力の限り暴れた。



「チッ、聞き分けねえな……」

「あっ……!」


「なっ、おいおい兄貴!」

「若!なんてことを……」



しかし、男の拳によってすぐさま鎮められる。


鳩尾(みぞおち)に重い痛みを感じ、一気に視界が闇色に染まった。


力なく、倒れこむようにして男の胸に体を預ける。







「俺から逃げるなんて許さねえ。
今からお前は俺のものだ、壱華……」






最後に覚えているのは、耳元で囁かれたこの言葉。


その声は、意識が途切れてもなお、頭の中で呪文のように繰り返されていた。
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