闇色のシンデレラ
SIDE 理叶




「兄貴、いきなり殴るなんて何してんだよ。
この子が相川壱華だって確認もしてないのに」

「うるせえな、グダグダ説教してるヒマがあったらさっさと乗せろ。こいつが壱華だ」



目の前の光景に言葉が出ない。



「剛、行き先変更だ。病院に行け」

「え、若、ですが……」

「こいつの手当てが先だ。急げ」

「はい」



俺から逃げようと道路に飛び出した壱華。


通りかかった車に跳ねられ、俺は最悪の事態を想像した。


しばらくしてから、動かない身体に(むち)を打ち、バイクから降りて恐る恐る停車している黒塗りの車に近づいた。


次の瞬間、瞳に映ったのは──




「チッ、死ぬなよ……」




壱華を大切そうに胸に抱いている『闇の帝王』だった。
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