闇色のシンデレラ
俺はその話を聞いたとき絶望した。



闇の帝王改め、荒瀬志勇という男は、裏の世界に携わる人間なら誰もが知っている存在。


北、東、西、それぞれに君臨する王の内、最強の呼び声高い男。


最も深い闇の中に生きる男。



そして、最も冷酷で無慈悲な人間。


狙いを定めた獲物は決して逃がさない、狼のような貪欲(どんよく)さ。


欲しいものを手に入れるためなら他人の命さえ惜しまない凶暴性。


常に上を見据え、全てを兼ねそろえた完璧な様は、否応なしに人々を魅了する。



その男がどうして壱華を欲しがるのかは、はっきり言って分からない。


ただ、これだけは言える。


壱華はもう帰って来られない。


あの男に捕まった以上、こっちの世界には戻れない。


誰も帝王には逆らえないから。




……頼む、壱華。


無事でいてくれ。



寒風がガタガタと窓を叩く店内で、俺は祈ることしかできなかった。
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