独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
目の前にそびえ立つ、巨大な水槽を見上げる。
「すごいですね」
「そうだな」
青い海水に太陽の光があたりキラキラと輝く中を、様々な魚が悠々と泳ぎ回る。その光景は幻想的でとても美しい。
深い青色が広がる世界で泳ぐって、いったいどんな気持ちなんだろう……。
「樹先生って泳ぎは得意ですか?」
「普通かな。華は?」
「……」
「もしかして、泳げないの?」
「……はい」
「へえ、そうなんだ」
泳げないことを渋々認めると、樹先生がクスッと笑った。
運動が苦手な私とは違い、テニス部に所属していた運動神経がいい樹先生が泳げないはずがない。些細なことが気になり尋ねたものの、墓穴を掘ったとすぐに後悔した。
なんでもできる樹先生がうらやましい。
「じゃあ、新婚旅行は海がある場所にしようか。俺が泳ぎを指導してあげるよ」
樹先生が腰を屈め、シュンと肩を落とす私の顔を覗き込む。
指導って、学校の先生じゃないんだから……。
そうツッコミたくなってしまった。
金沢でテニスの話になったときも『特訓しようか』と言っていたし、冷静沈着なのに、意外と熱血な部分があるんだ。