独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
ダイニングで朝食をとる私の前に、母親が腰を下ろした。
「昨日は桐島先生とどこで食事したの?」
「えっ?」
昨日、飲みに行った相手は加藤君で、樹先生ではない。
身に覚えのないことを聞かれ、トーストに添えられたサラダを口に運ぶ手が止まってしまった。
「飲ませすぎてしまってすみませんって、謝ってたわよ」
「そ、そうなんだ……」
きっと両親に余計な心配をかけないために、加藤君のことを伏せてくれたのだろう。
両親は兄の友人であり、腕のいい医師である樹先生に絶大な信頼を寄せている。彼の言うことは信じて疑わない。
「ねえ、華? もしかして桐島先生とお付き合いしてるの?」
「ま、まさかっ!」
首をフルフルと横に振る。
「桐島先生がお相手なら、安心して華を任せられるんだけどな」
「……」
母親が唇の端を上げて意味ありげな笑みを浮かべた。
任せられるもなにも、私は樹先生にフラれている。
その事実を知らないとはいえ、好き勝手なこと言う母親をうらめしく思った。