独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

不安を感じているとひと言も話してないのに、なぜ私の気持ちがわかったのだろう……。

「ど、どうして……」

樹先生の顔を見上げると、長くて綺麗な指先で眉間を軽く突かれてしまった。

「ここにシワが寄ってる」

「えっ、あ……」

ブサイクな顔を見られてしまったことが恥ずかしい。

指で眉間のシワを伸ばすように、慌ててこすった。

「華ってわかりやすくて、かわいいよね」

樹先生の手が頭の上にのり、ポンポンと跳ね上がる。

かわいいと言ってくれるのはうれしい。けれどクスクスと笑われたら、からかわれているようでなんだか悔しい。

「もう! 子供扱いしないでください!」

頬を膨らませて猛抗議すると、目鼻立ちが整った顔がゆっくりと近づいてきた。

唇が短く重なって離れる。

「子供にキスしたいとは思わないよ」

樹先生が謎めいた笑みを浮かべ、私の手からチーズケーキがのったお皿を取り上げてテーブルの上にコトンと置いた。

今度は、なに?

突然キスをしてきたり、不敵に笑ったりする樹先生の心が読めない。

戸惑いながら澄んだ瞳を見つめていると、両肩の上に大きな手がのった。

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