独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「樹先生! いらっしゃい!」
数学の勉強を見るために、休みになると白金の家に通うようになった。
『樹先生』と呼ばれ、笑顔で出迎えられるのがとてもうれしい。
「元気だった?」
「はい!」
頭に手をポンとのせると、瞬く間に頬が真っ赤になった。
初々しい反応がいちいちツボにはまり、力いっぱい抱きしめたい感情が込み上げてきてしまう。けれどこれは疑似兄妹愛であって、恋愛感情ではない。
そう思い込んでいた。あのときまでは……。
彼女が中学三年生になったバレンタインデー。
「樹先生。いつも勉強を見てくれて、ありがとうございます」
医局の前で、彼女が頬を赤らめてチョコを差し出してくる。
制服姿ということは、学校帰りだよな?
わざわざ病院まで出向いてくれたことを、うれしく思った。
でもこれはいったい、なにチョコなんだ?
本命だったら、いいのに……。
ふと、あり得ないことを願っている自分に気づき、慌ててしまった。
いや、いや。なに考えているんだ。彼女は俺のことを、家庭教師ぐらいにしか思ってないだろう。
現に『いつも勉強を見てくれて、ありがとうございます』と言われたばかりだし……。
それでも、彼女の気持ちをたしかめてみたいという衝動を抑えることができなかった。